Dense2's Blog Weekly

~『週刊電説』【Just Another KissBlog】

☆『クラウドソーシング』〔ヒューマンネットワークの夜明け〕

※『クラウドソーシング』:はしがき〔ヒューマンネットワークの夜明け〕より

  • 二人のジェイク
    • 『スレッドレス・ドットコム』
    • ~”二人のジェイク”、すなわち、ジェイク・ニッケルジェイコブ・デハートという二人の大学中退者は、2000年頃、自分たちで”デザイン・コンテスト“の会社を興した。数ヵ月後、『スレッドレス・ドットコム』というWEBサイトを立ち上げ、デザイン投票⇒優勝者へは商品化&販売権を付与というシンプルな方式で、瞬く間に《Tシャツ・コンテスト・コミュニティ》を成長させていく。特徴的なのは、全くの”アマチュア同好会“でありながら、(ITベンダーなどを除けば)プロや業者の手を借りていないことにある。

  • 偶然の経済
    • 『アイストックフォト』
    • ~”二人のジェイク”がTシャツのビジネスを始めた頃、”ブルース・リヴィングストン“も新しい事業に乗り出していた。『アイストックフォト』というWEBサイトを中心として《写真コミュニティ》が育まれていった。ココの特徴は、写真の使用料を通常のプロサイトでの価格の”1/100“程度に抑えたことと、その使用料をサイトと撮影者【著作権者】との間で”折半“したことである。【後に、”ゲッティ・イメージ“社に買収されるが、これは、YouTubeGoogleに買収されたケースと似た例だった】

    • 《デジタル・ネイティブ》の出現
    • ~これは、”未来学者“のアルビン・トフラーがその著書:『第三の波』の中で予言した、”プロシューマー“の登場に等しいものがある。すなわち、消極的(受身的)消費者から”積極的(参画的)発信者“へ…という流れである。しかも、この流れは、現在の「十代」【ティーン・エージャー】を中心として、確実に成長しながら力強いトレンドになっていっている…とされています。

    • 《ユーザー生成コンテンツ》の隆盛
    • ~例えば、”コンバース・ギャラリー“という広告キャンペーンなどのように、製品メーカーの広告代理店がその消費者たちのような一般”ユーザー“から広告を募り投稿させるとか、素人起点の”UGC“【User Generated Contents】や”CGM“【Consumer Generated Media】を取り入れる企業が増えていること。これこそが、”ニューメディア“だともてはやされている。

    • こうした状況が生まれる動因として -
      1. 生産コストが安いこと
      2. 行き場のない才能や創造性が持て余されていること
      3. インターネット上に同好の士のコミュニティが築かれていること
    • などが挙げられています。

    • ソフトウェア開発における《オープンソース・ムーブメント》との融合
    • ~OSの”リナックス“しかり、サーバーソフトの”アパッチ“しかり、ウェブブラウザーの”ファイアフォックス“【モジラ】しかり…「情報経済」のインフラの多くはこうした”ボランティア“の集団によって作られ支えられてきた。つまり、かつては、企業の正社員だけが手がけていた仕事を、大抵は低賃金で、あるいは無償で、集団として完成させるわけである。そして、人間に関する重大な真実として、しばしば企業よりもコミュニティのほうが効率良く仕事を進められるということが明らかになってきました。

    • P&Gの挑戦
    • ~創業から160数年を経たかつての優良企業:プロクター・アンド・ギャンブルP&G】は2000年半ばに苦境に立たされた。画期的な新製品を作れなくなり、株価は50%も下落、この緊急事態に新任のCEO:A・G・ラフリーを迎え経営の舵取りを任せる賭けに出た。彼は、「開放せよ」をスローガンに販売部門と研究開発部門、エンジニアリング部門とマーケティング部門を隔てる壁を取り払うと同時に、会社と仕入先、小売店、顧客との間の壁も取り払った。その上で、”《オープンソース》の開発手法を採り入れ、退職した研究員のコミュニティ・サイト:『ユア・アンコール』の開設に手を貸し、さらに、東欧・中国・インドなどの国々での知的資本推進エンジンとなりつつあった『インノセンティヴ』と呼ばれる、14万人の科学者からなるネットワークを活用することにした。これらの戦略はズバリ当たり、株価はそれまでの最高値を上回り、純利益は2007年に以前の3倍(100億ドル)を稼ぐまでに復調しました。【”IBM“はこの手法に早くから着目し、『アイデアジャム』というサイトを立ち上げています】

    • アメリカらしい「正しい民主的手続き」の復権として…
    • ~これは、サン・マイクロシステムズの共同創立者:ビル・ジョイによって最初に指摘された、「誰であろうと関係ない。頭のいい人びとの殆どは他人のために働く」という革新的な真理を、《功・利他主義》という超・楽観的なレベルにまで信じようとする、いかにもアメリカ人らしいメンタリティでもあります。

  • 小さいパーツの革命
  • クラウドソーシングはインターネットと密接に関わっているが、その本質はテクノロジーには関係ない。それよりも重要なもの、興味深いものはテクノロジーによって生じる行動であって、特に、インターネットを介して沢山の人々が団結し、(自己)組織化して、生き生きと、パワフルに活動する可能性が出現しつつある…ということです。”Wikipedia“というネット上の百科事典の編纂にその片鱗は見られたが、最近では、『SETI@home』【JP】という”地球外生命体探索PT“への応用がその好例です。これは、一時もてはやされた”グリッド・コンピューティング“【分散コンピューティング】の考え方に似ていますが、インターネットをシステムの基盤【プラットフォーム】に据えた点でクラウドソーシングのほうがよりダイナミックであると言えるでしょう。
    そして、この考え方の優れている点は、一般人の”スペアサイクル“【空き時間などの余剰処理能力・リソース】を拝借している…というところです。たまたまではありますが、今後、世界的に”ダブルワーク“や”トリプルワーク“などの《マルチタスクの時代》が恒常化していくトレンドの中、人間はようやくコンピューターの”クロック・サイクル“に合わせた働き方を得られるようになったと言えるのかもしれません。ネットには”常時接続“しているけれども、コンピューターを操作するのは”スペアタイム“で…というこのスタイルは、忙しい現代人には打ってつけなのかもしれませんね。

  • 結びとして - ヒューマンネットワークの明るい未来
  • ~インターネットは人々を孤立させる…という不吉な予言とは裏腹に、クラウドソーシングはインターネットのテクノロジーを利用し、様々な土地で、様々な背景の下に暮らしている人々に、団結し、意義ある交流をする機会を提供しつつある。また、クラウドソーシングは、もう一つの関係を築きもする。それは、”企業と顧客との協力関係“である。
    そして、《マズローの欲求五段階説》に示されているように、人々は自分の才能を養うことや、自分の知識を誰かに教えることには大きな喜びを感じる。【”自己実現・表現欲求“としてのコミュニティーへの”貢献意欲“の発露】クラウドソーシングでは共同作業そのものが”報酬“となる”善循環“が生まれつつある…としています。
    また、クラウドソーシングは、まさかと思うような所から才能ある人々を引っ張り出すという不思議な傾向を持っていて、大掛かりな”才能発掘装置“のような様相を呈しつつあり、これはまさに、《ロングテール現象》のより”純化“した形だと言えるでしょう。【”YouTube現象“がその際たるもの】
    この点で、クラウドソーシングは、文字通り、地球の”フラット化“を加速する推進エンジンでもある…としています。【コールセンターの相次ぐ”BRICs移転化“などに顕著な現象】

『スレッドレス・コム』スクリーンショット:M-250

『アイストックフォト』【JP】スクリーンショット:M-250

『インノセンティヴ』スクリーンショット:M-250

『SETI@home』【JP】スクリーンショット:M-250

『BBC World News』スクリーンショット:M-250

『キヴァ』スクリーンショット:M-250

『セラバンド』スクリーンショット:M-250

『アサインメント・ゼロ』スクリーンショット:M-250

2009年 7月 4日 Posted by | Business, Economy, IT-WEB, Psychology | , , , , , | コメントを残す

保護中: 『クラウドソーシング - みんなのパワーが世界を動かす」』〔続〕

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2009年 6月 29日 Posted by | Business, Economy, IT-WEB, Psychology | , , , , , | コメントを読むにはパスワードを入力してください。

『クラウドソーシング - みんなのパワーが世界を動かす』

☆早川書房から、意欲的かつ挑戦的な新書:”ハヤカワ新書juice“が刊行されました。その第一号が、『クラウドソーシング』です。最近、何かとIT-WEB業界を騒がせる”クラウド“というコトバですが、同じクラウドでも、”cloud“【雲海】ではなくて、”crowd“【群衆】のほうです。言わば、”集合知“【Collective Intellect】としての《群衆の叡智》に期待する、楽観的な文明批評本でもあります。

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2009年 6月 29日 Posted by | Business, Economy, IT-WEB, Psychology | , , , , , | コメントを残す